わたしたちの理念

「障がい者と健常者の見えない垣根を取り払う社会」を目指し、わたしたちは各所ではたらいています。入居してくださっているみなさんと「まるで家族のような」関係になれるよう、ともに歩み続けていきます。

難病・障がい者医療の未来を切り拓く。

The future of medical care for the disabled.

今日、あらゆる場面において社会は著しく変化し、個人にとっての生き方や働き方、暮らし方にも大きな影響を与えるようになりました。昨日までの常識が今日の非常識であるかの如く、多種多様な価値観が生まれ、それらは「ダイバーシティ〈多様性〉」と呼ばれています。それと同等によく用いられる「インクルージョン〈包括性 /一体性〉」という言葉も、誰もが平等に社会に参画し、自己の能力を活かしていくことを意味します。

 わたしたちは、医療依存度の高い利用者のみなさまと日々多くの時間を過ごし、共に歩んでいます。障がいを持つ人と健常である人とを分け隔てて考えることや自分とは違うと決めつける社会は、偏見や差別を生み出します。「これらは、類型化された固定観念〈ステレオ タイプ〉によるものではないか」という問いをわたしたちは持ち続けています。大局的に見れば、同じ世界、同じ空間で生きているはずのわたしたち自身が、無意識のうちに他者を選別し、分類化することで、その可能性や共感を遠ざけてしまっているのだと考えます。

 医療の現場に従事するわたしたちは、障がい者と健常者の見えない垣根を取り払い、誰もが共存でき、認め合えるような新しい医療社会、地域社会をつくっていきたいと強く願っています。障がいを持つことが、走るのが下手だとか、手先が器用だとか、それらと同じレベル、同じ感覚で語られる「個性」として認められる社会。それこそが、これから先に続く未来の包括的社会の在り方なのではないかと思うのです。

 2 0 2 1 年春にオープンした「ヘルスケアアパートメント 祇園庵(ぎおんあん)」は、この「垣根を取り払う」試みを具現化するための新しい社会的空間になることを目指しています。障がい者医療の機能を備えた場であることを最優先にしながらも、誰でも来館し、自由に時間を過ごし、ときには入居者のみなさんと触れ合う機会が持てる場所。食べることを楽しんだり、やりたいことに熱中したり、それぞれが描く人生の豊かさを語らうことができるコミュニティ。このような空間を創造することは、わたしたち医療従事者が、はたらく喜びそのものを生み出すことでもあります。

 多くの人が持つ無意識のバイアスを取り払い、社会変化を受け入れ、誰もがより良く、より生きやすく、他者を尊重できる社会の実現を、わたしたちは願ってやみません。